本文章は、技術書典5にて[project daisy bell]( https://twitter.com/MNukazawa )がリリースする予定の、クロスプラットホーム・デスクトップアプリケーション・GUIフレームワーク・クロスレビュー本(仮)(以下、クロス本)の一部の草稿です。
クロス本は、筆者のGtk/Qt/electronの経験と知見について扱います。具体的な解説書というより技術エッセイです。
本文章には、校正前の文章・記憶により記述し未確認の内容・雑なmarkdown風紀法・張ってないURLリンク、などがあります。
# 開発環境・IDE
現代的なプログラミング言語やフレームワークには、専用の開発環境が用意されていたり、開発を支援するエディタアドオンが利用されていることが多い。前者はiOSのXcode、AndroidのAndroidStudio、PythonにはJupitorNotebookがある。後者はVSCodeのc++アドオンなど。
GtkにはAnjuta、QtにはQtCreatorというIDEが用意されており、electronには専用IDEのたぐいはない。
筆者は、Qt以外ではGUIアプリケーション以外でもほぼ全てのコーディングにVimを使っている。
またターミナルによるコマンド操作で開発作業を行うことが多い。
## Gtk
GtkのAnjutaは率直に言って使い物にならない。Ubuntu14.x-16.xの頃、aptパッケージマネージャから導入したAnjutaが、最初のプロジェクト作成ウィザードを実行中にクラッシュしたことがある。
また、公式によるWindowsバイナリは用意されていない模様。
Anjuta自体は、PyGtk言語バインディングだけでなく、Gtkと関係ない開発も行える汎用IDEを目指しているようだ。
(Java、GnomeShellの拡張、等のプロジェクトが作成できる。eclipseのようなものか。)
Gtk向けの開発支援機能として、GUIによるフォームデザイナ(ポトペタ)機能が用意されている。
ドキュメントの章で書いていると思うが、Gtkユーザの中でもAnjuta使用者は少ないため利用するにあたって参考になる情報もあまりない。
フォームデザイナでWidgetをポトペタした後で、Widgetに求めるプロパティを設定するにはどこを編集すれば良いのかわからない。
2018年現在、今ならさすがに解決されているだろうと思ってUbuntu18.04でAnjutaの動作を確認してみたところ、一番最初のウィザードでgtkのライブラリが足りない旨のエラーが出た。
その後のビルドも `**Error**: You must have `libtool' installed.` などと出て失敗したので、色々と依存関係パッケージが足りていないようである。
デバッガも専用のものはないのでgdbを使用する。
メモリ範囲外アクセスのバグ等でクラッシュする場合など。
ビルド時に-gオプションを忘れないこと。
筆者はAnjutaは使わずに、開発はMakefileを書いてターミナルで実行し、コードはvimで書いている。
Windows向けはUbuntu上でmingwを用いてクロスビルドし、公式がGtk3ライブラリのWindows向けバイナリを提供していないため、非公式なビルドをダウンロードしてGtkアプリケーション開発をしている。
[Windows向けGtk3ライブラリ 非公式配布版]( https://drive.google.com/drive/folders/0BwkefA3JqxdIcGVuNkJfLVFyV2c )
[上記ライブラリを配布している @niloufarjp 氏のtwitter]( https://twitter.com/niloufarjp )
MacOXS版は作ったことがない。
## Qt
GtkのAnjutaが使い物にならないのに対して、QtのQtCreatorは実用的である。Qt公式によりWindowsおよびLinux版(たしかMacOSXも)のバイナリが提供されている。
QtCreator以外に、VisualStudioでもWindows向けQtアプリケーションが開発可能であるらしい。
ありがちな話として、Ubuntuのパッケージマネージャでインストール可能なQtCreatorは大抵バージョンが古い。
QtCreatorにも汎用IDEを目指す部分はあるようなのだが、基本的には、QtおよびQML、その他のQtの言語バインディングに特化している。
もちろんWidgetのフォームデザイナ機能も用意されている。
GtkよりはWidgetのプロパティ設定も読みやすく設定しやすい。
ある程度ユーザも多いようで、Web上に参考になる情報もある。
QtCreatorのフォームデザイナは、QtCreator向けアドオンで拡張することで、独自定義Widgetを扱えるようになる。
ただし、筆者が以前試した限りでは、このアドオン導入は上手く行かなかった。原因を追求していないので、アドオン側が壊れていたか、単に筆者の手順が悪かっただけかもしれないが。
Ubuntu環境ではQtCreatorを使用してQtC++のプロジェクトをビルドする際に、依存するライブラリの不足で失敗することがあるため、追加パッケージとしてlibglをインストールする必要がある。
(Ubuntuバージョンによってパッケージ名が違うかもしれないので検索でlibgl*-devを探すとよい。)
Ubuntu17付近のIMEがfcitxを使用している環境では、QtCreatorに日本語入力するためにはfcitx-qt5アドオンをソースからビルドしてQtCreatorに導入する必要がある。
QtCreatorをVM上のUbuntuで使用する場合に、OpenGL周りの問題なのかWindowが白塗りとなって内容が表示されない場合がある。
その場合、QtCreatorをターミナルから起動し、起動時オプションでOpenGL周りのオプションを無効にすることで回避できる。
以前はビルドシステムはqmake、自動テストはQTestLibのみだったが、現在はビルドシステムにcmakeや自動テストにgoogletestが選択できるようになった模様。
gdbが組み込まれている。QVectorの範囲外アクセスによる例外などが発生した場合に重宝する。
筆者は公式からWindows向けおよびLinuxのQtCreatorをインストールしてQtアプリケーション開発をしている。
クロスビルドを構築するのは面倒なようなので、配布用バイナリは、Windows/Linuxそれぞれ環境構築してビルドしている。MacOSX版は作ったことがない。
Windows向けはVisualStudio版とMinGW版があり、MinGW版を使用していた。近年、VisualStudio版と統合された模様。
## electron
electronには専用IDEのたぐいは存在しないが、chromiumブラウザ由来の強力な実行時デバッガにより、Gtk/Qtとは段違いに高レベルが高いランタイムな開発支援が受けられる。electronは専用のフォームデザイナは無い。
electronの画面は普通のHTMLなので、ポトペタがしたければ別途HTMLエディタ的なものを探せばよい。(使ったことがないのでどのようなものがあるかは不明)
だが、chromium由来の機能として、実行中に実行時のウィジェットツリー(DOM構造)と、Widgetプロパティを見ることができる。
DOMツリーに追加したelementが、思った箇所に追加されているか、また思い通りに表示されているかを実際の描画で確認することができる。
Windowサイズ変更した際の、Widgetサイズがどのように変化するかも確認できる。
また、CSSの値も確認することができる。
elementのCSSの値は、親elementからの継承、CSSクラス指定による上書き、style Attributeによる直接指定、jsによる書き換えによって複雑に上書き変化するため、思い通りに表示されない場合、人間が追いかけることは大変むずかしい。
思い通りの表示になっていなければ、動作中にDOMツリーやCSSを書き換えながら、思い通りの表示をする方法を探すことができる。
これらのフォームデザイン補助機能は、圧倒的に便利である。
CSSの章でも書くと思うが、electronの実行時GUIビジュアルデバッガを体験すると、GtkとQtのフォームのデバッガビリティの低さは論外であると理解できるし、特にGtkのCSS採用はあまりに愚かな判断ミスだったとしか思えなくなる。
(※このへんの内容は、もっと詳細にしてCSSの章に移動すると思う)
jsのデバッガが組み込まれている。
gdb,QtCreatorなどと同じく、ブレークポイントや関数呼び出しのトレースなどデバッグに必要な操作が行える。
Gtk,Qtとの違いとして、配布の際もchromiumの全機能が付いたままであるため、デバッガを切り離すことはできない。
ユーザからのデバッガへのアクセスを避けたい場合、デバッガの呼び出しショートカットを無効化すること等で対応する。
筆者はnodejsの最新安定版をnodejs公式からインストールして、そのnpmからelectronパッケージおよび他の依存関係パッケージをインストールしてelectronアプリケーション開発をしている。
開発時のtest等のコマンドはpackage.jsonに書くのが一般的なようなのだが、筆者はパッケージ作成まで含めたMakefileを書いている。
コードはhtml,css,jsまですべてvimで書いている。
開発はLinux上で行い、配布用のWindowsおよびMacOSX向けビルドはLinux上で作成できるためそのようにしている。
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